アイドルは結局3次元には存在しない
アイドルという職業はとても「危ない」職業である。
最近韓国アイドル界での闇がどんどん浮き彫りになっているけど、
結局の原因は「消費のさせ方、あり方」であると考える。
アイドルはキラキラしてて可愛くてかっこよくてスタイルもよくて、
頭の中ではしっかりとこの世に存在し生きていることも分かるけれど、
現実味が薄く自分とは程遠い存在である。
自分とは程遠い存在と分かっていても、生きていることはしっかりと認識しているからこそアイドルに対して「親近感」を沸いてしまう。
この矛盾がより一層ファンの心を駆り立て、
アイドルに対して自分の理想の「キャラクター像」を与える。
アイドルを自分好みにキャラクタライズするということは、
そのアイドルを現実空間から仮想空間に存在するアイドルと昇華させ、
しかしながら完璧には昇華させずに現実空間にも身体半分置いておかせるような状態のことである。
つまりファンはアイドルは仮想空間だけに存在するわけではなく、現実空間にも存在することを分かっているのだ。だからこそ「消費者のあり方」が難しい。
アイドル=商品だと分かっているが、消費できる商品であるという認識と
アイドルそのものが人間であることがアイドル×ファンの関係性を複雑にさせる。
アイドルに対して疑似恋愛の感情を抱き、それだけではなく親目線で応援する。
そしてまたアイドルは商品であるからこそ「プロ」であることを求める。
特に「夢を見させてくれる」という言葉そのものがその象徴なのではないかと考える。
3次元に存在している認識を持ちながらも、2次元の存在としてアイドルを扱っているからこそ、彼らが人間であることを忘れさせ、また彼らが人間であることを強調させる。
特に個人的に印象深く覚えているのが、(多分これ分かっちゃう人は分かっちゃう)
あるアイドルがあるグループに所属しつつもソロで活動している中、
そのグループと共に日本でファンと交流するイベントが開催されるという告知がされた後、グループに属する彼ではなくソロとして活動している彼を応援しているファンが猛抗議しだした。
その中で(まああまり深い内容は覚えていないけど)「彼がかわいそう!」みたいなツイートをしているファンがいて、これが非常に衝撃的だった。
というのもこれ、「いやどんな気持ちかは本人じゃなきゃわからないじゃん」ていう。
結局このファンは、現実空間に存在する事務所が売り出している商品としてのアイドルと、自分のオリジナルの仮想空間に存在するアイドルが混濁してしまっている。
事務所の売り出し方に文句をつけ、抗議活動によってそれを無理やり捻じ曲げる権限を今のファンには与えられてしまったことが従来の「消費者としてのあり方」を変えてしまい、韓国アイドル界の闇を深くしてしまったと考える。
また私の最愛の推しは、自分のファンの仮想空間に各々存在するキャラクタライズされたアイドル像を自ら壊してしまったが故に、愛情を憎悪に変えてしまった。
商品であるからこそ自分がお金をかけた見返りを求め、信じていた推しに疑似恋愛感情を壊され、また3次元に存在していることを知っているからこそ見るに堪えないアンチのコメント、いや憎悪を本人にぶつけてしまう。
彼に対して「こんなにもお金をかけたのに!」という言葉と「裏切ったな!」という言葉がよくSNS上では見られるが、これこそアイドルに対して2次元と3次元を切り分けられずに消費しているいい例だと思うし、これを悪いことだとは私は責めない。(流石に本人にアンチコメントを残すのはめちゃくちゃ責めるけど)
これは結局アイドルという職業は結局2次元であり3次元であることを売りにしているからこのような一件が起こってしまうし、その結果アイドル本人達は心を病んでしまう。
アニメや漫画だと憎悪の感情をSNS上で発散しても、そのキャラクター本人が傷つくわけではない。けどアイドルは違う。
感情を売りにしている生身の人間だからこそ、利益は多く損失も多い。
ハイリスクハイリターンな職業。
そして夢を見させるような素晴らしい「演者」だからこそ、
商品としての認識を確固たるものにせず、その認識をふわふわさせた状態でお金を稼ぐ。
とても「危ない」職業だとやっぱり思う。
人間であり人間でないからこそ、人(ファン)の心を動かし、
またそのファンによって自分の精神を壊される可能性がある。(勿論事務所による彼らの扱い方も大きな要因であると思うけど)
それでもなお「夢」を与えてくれる彼らから私は抜け出せないのだ。
私も同様に私自身の仮想空間に彼らをキャラクタライズし、それをエンタメとして消費しお金を落とす。彼らも人間であるからこそ彼らに対して情が湧くし、キャラクタライズした存在だからこそより愛おしい。
アイドルは沼である。